ご相談例

不安性障害

ご相談例

不安性障害 30代男性

訪問開始前

小・中学校といじめを経験し、不登校になった経験があります。
なんとか高校には入学しましたが、またいじめにあい不登校となり中退。以後大検取得し大学を目指しましたが、周囲の物音に敏感となり、何度か精神科を受診したものの、医療不信もあり20歳から祖母宅でひきこもるようになりました。
将来不安から自宅内で暴れ、器物破損を繰り返し、母親と祖母が精神科に相談し、内服の処方を受けてはいたのですが、内服はしていない状態でした。
母親と祖母が精神科の医師に相談し、当事業所に訪問の依頼がありましたが、本人の選択・決定ではないためお断りし、本人に選択・決定してもらうようにお伝えしていました。

訪問開始後

母親と祖母との面談後3ケ月が経過し、本人から「来てほしい」と依頼があり訪問開始に至りました。
面談時は場面緊張が強く、苛々した様子もあったが「将来への不安が強い。でも自分で何をしていいかわからない状態」と話していました。
まず、障害年金の申請に向け、幼少期からの出来事を密に傾聴していきました。

話の流れの中に、妄想気分・知覚・着想といった妄想思考の流れがありましたが、その時点では「本人の間違いのない経験」として、傾聴を続けました。障害年金を申請する頃には、本人の経験を共有しているジョイント職員としての関係が構築され、訪問時の場面緊張も減退していきました。
会話が深まるにつれ「人生経験が少なすぎて、何をするのにも自信がない」と心情を話されました。SSTとして自宅周辺の散歩から人目に慣れてくことから始め、家族と近隣のコンビニでの買い物、年金の受け取りのためのATM利用、精神科受診など生活していく上での必要な訓練を繰り返し、以後3年かけて経験を重ねていきました。
3年が過ぎ、自宅近隣への外出や買い物は単独で行えるようになり、精神科への受診もできるようにはなりましたが、内服薬には不信感が強く、非定型抗精神病薬の処方もあったのですが、軽い睡眠薬と少量の抗うつ剤以外は内服には至りませんでした。
こちらからは症状を感じた時に内服を始めてみて、効果を感じるなら続けてみようと提案し、場面を待ちました。

軽い睡眠薬で生活リズム・睡眠リズムも整い、抗うつ剤で活力も回復し、訪問4年目で「次のステップへ進みたい」と本人から希望がありました。それから障害支援区分認定を受け、当事業所が関わりのある作業所への通所を開始しました。
すると、通所数日で「俺の個人情報を聞き出している」「自宅まで狙いに来たらどうしよう」と作業所職員への疑念が増強してしまいました。この時初めて、過去本人が「間違いのない経験」として感じていたいじめの内容や、今回感じている注察感や追跡感が病気の症状である事を説明し、内服を促していきました。
しかし、その際も内服にはいたらず、次週には「間違いなく俺は狙われている!」と作業所通所中断に至りました。

半年後「もう一度作業所に行きたい」との希望があり、通所を再開始しましたが、同様に2週間で「監視カメラが俺を見ている!」と興奮し、通所中断となりました。

その後

同居していた祖母が急逝し、将来を悲観して睡眠薬を過量内服してしまい、結果、視力調節障害に陥り、一時的にほとんど目が見えなくなり、強いうつ状態に陥りました。主治医の指示で内服管理を徹底し、抗うつ剤の増量で2ケ月ほどで回復しましたが、その際の経験から用量・用法を守った内服と、症状に合わせた内服薬が必要な事を学びました。また、自身の思考の流れを理解し、人への疑念が生じることが、自身の生きにくさの理由と受け入れ、非定型抗精神病薬の内服も開始になりました。

現在は非定型抗精神病薬を少量内服し、少量の抗うつ剤と軽い睡眠薬で作業所へ通所出来ています。他者への疑念や内服薬による副作用症状もなく「経験から学んで、未来につなげたい」と将来への希望を表現しています。